水野研では、北海道陸別町、南極昭和基地、アタカマ高地(チリ)、リオ・ガジェゴス(アルゼンチン)、トロムソ(ノルウェー)にミリ波大気分光観測装置を設置し、成層圏・中間圏のオゾンや窒素酸化物、オゾン層破壊物質等の大気微量分子の定常観測を行っています。
図 アタカマ高地に設置されたミリ波大気観測用コンテナ(後ろのドームはNANTEN2望遠鏡)
アタカマ高地は、アンデスの標高4,800 mに位置する広大な砂漠地帯で、世界最先端の巨大電波干渉計「ALMA(Atacama Large Millimeter sub-millimeter Array)」や国立天文台のサブミリ波望遠鏡「ASTE(Atacama Sub-millimeter Telescope Experiment)」もこの地に設置されています。日本からは、北米を経由してチリの首都サンティアゴ空港に飛び、さらに国内線に乗り換えてカラマのエルロア空港まで行きます。そこから乗り合いバスでサンペドロ・デ・アタカマというチリで最も古い町に行くことができ、私たちは通常この町に滞在します。ここまでの日本からの所要時間は、48時間ほどです。また、サンペドロからアタカマ高地までは、車で1時間ほどです。
アタカマのミリ波観測装置は、2005年から運用が始まりました。観測初期には180 GHz帯の水蒸気同位体分子や200 GHz帯の一酸化塩素分子のスペクトル観測を行い、現在は250 GHz帯のオゾンや一酸化窒素分子の観測ができるようになっています。アタカマ高地は標高が非常に高いため大気の透過度が良く、微弱な大気分子スペクトルを高感度に観測できることが特徴です。
私たちはこの観測サイトを名古屋大学大学院理学研究科の天体物理学研究室(A研)と協力して維持・運用していますが、A研は口径4 mのミリ波・サブミリ波望遠鏡「NANTEN2」を同サイトで運用しており、これまでに得られた観測データから星間物理学の分野において多くの成果を挙げています。